ポンペイの遺品
紀元七九年、町の裏手にそびえるヴェスヴィアス火山の大爆発によって一瞬のうちに埋まってしまったイタリアの古代都市ポンペイは、十八世紀に発掘され、驚くほどに高度な文明生活がここに発達していたことがわかったそうです。
この発掘品の中に刺繍とかかわりの深い金属製の針やピンセット、きり、指ぬきなどがありました。
古代ローマ人は裁断技術こそ平凡だったが刺繍はとても盛んで、貴婦人たちはそれぞれ刺繍のアトリエを持ち、一流の画家たちに下絵(カルトゥーン)をデザインさせ、召使いの女たちにドレスなどを刺繍させました。
服飾のおしゃれは、服地とアクセサリーと刺繍で競うしかなかったのです。
こうしたおしゃれは、やがて、中世後期に復活します。
刺繍の地布は必ず枠に張られました。
しわを防ぐためでした。
その上にデザイナーが下絵を羽ペンで描きます。
しかし、その代りに、絹地に描いたモチーフを切りとってビロードの地布の上にアップリケするやり方もあったそうです。